エビデンスにより、米国ではPSA検診を推奨していません! – プラズマサロン ひだまり庵

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エビデンスにより、米国ではPSA検診を推奨していません!

PSA検診は、前立腺の正常細胞で作られるタンパク質であるPSA(前立腺特異抗原)ががん化することで血中値が上昇することがあり、腫瘍マーカーとしてがん発見のためのツールとしているものです。

このPSA検診が普及し始めた2000年代頃から、前立腺がんがたくさん見つかるようになりました。1996年の罹患者数が14,077人から2019年には94,748人と7倍近く膨れ上がっています。

その一方で、前立腺がんによる死亡者数は、1995年の5399人から2020年に12759人と2倍程度です。

通常、がんになった人は一定の割合で亡くなります。前立腺がん検診が普及していなかった頃は、何らかの症状があって前立腺がんが見つかった人の半数ほどが死亡していました。

ところが現在、前立腺がんで死亡する人は、前立腺がんと診断された人の7分の1以下しかいません。いくら治療成績が向上したといっても、常識的には考えられないほどのギャップです。

つまり、このような異様な状況が生まれたのは、PSA検査が普及したからです。

これによって、これまで見つかっていなかった前立腺がんがたくさん見つかるようになったため、前立腺がんが増えたのです。

前立腺がんには、生きている間には見つからなかったけれど、死亡後に解剖してみて、初めて見つかるがん、つまり“ラテントがん(潜在的ながん)”が2割ほど見つかるといわれています。前立腺がんは、それがあったとしても生涯気づかずに、別の病気で亡くなる人が多い病気なのです。

それは、前立腺がんは進行がとてもゆっくりな、いわゆる「のんびりがん」が多いからです。こうしたがんは、見つける必要はないのですが、PSA検診はラテントがんをわざわざ見つけてしまう、いわば「寝た子を起こす」ようなことをしているのです。

事実、米国で行われた臨床試験では、非検診群に比べてPSA検診群で前立腺がんの死亡率が減少する効果は確認されませんでした。

ただ、EUでの臨床試験では、確かにPSA検診群での前立腺がんの死亡率が下がっていましたが、データをよく見ると、前立腺がんの死亡者を1人減らすのに、1410人がPSA検診を受ける必要があるという結果でした。一方で、「異常あり」と診断されて、針を刺される生検を受ける人が339人、そして前立腺がんの治療を受けた人が48人もいたのです。48人治療して、1人しか死亡を減らせず、残りの47人の中には、体を痛めつけられて命を縮めてしまった人もいたはずです。

また、PSA検診が普及しなかった英国での前立腺がんの発見率はわずかしか上昇しませんが、PSA検診が盛んだった米国では、前立腺がんは多数発見されたにもかかわらず、前立腺がんによる死亡率やその推移は、英国のそれとぴったり重なりました。

これは、早期発見・早期治療の理論によればあり得ない事態です。

以上のような結果などを受けて、米国予防医学専門委員会は2012年に「年齢に関わらず、前立腺がん検診を実施しないことを推奨する」という勧告を出しています。デメリットが非常に大きいからこそ、PSA検診を推奨しないという結論を出したのです。

また、日本でも、国立がん研究センターを中心とする厚労省の研究班が作成したガイドラインで、前立腺がんのPSA検診については推奨しないとする「グレードⅠ」に格付けをしています。

つまり、PSA検診は死亡率を下げる効果が明確でなく、過剰診断の不利益があるので、お勧めは出来ないとの国の公式見解なのです。

ですから、エビデンスにより必要性を推奨されていないPSA検診はやらないようにしましょう。

 

(参)やってはいけない健診事典、がん検診を信じるな

2023.10.04[ がんがんを理解しよう ]

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